1990年代生まれの漫画論。

大事なこと・好きなことを忘れないように。欲しいものを叫び続ける。

【感想・まとめ]きまぐれオレンジ★ロード

きまぐれオレンジ★ロード

Amazonに投稿したレビューをこちらでも記載します。

古い名作です。

絵は古くても女の子がみんなかわいい。

 

2018年3月12日

古い名作です。
少年誌恋愛漫画としては、金字塔というよりも、古典と表現した方が適切でしょう。
現代の作家(漫画家だけではない)たちにいったいどれだけ影響を与えたのだろうかと想像しながら読むと、違った面白さがあります。

基本的に1話完結の話です。

読んでみて驚いたのですが、1巻で作られた三角関係が特に変化することなく最終巻まで続きます。
要するにストーリーに中身がありません。
ストーリーに中身がないからこそ、現代のマンガでよく見られる「成長」「友情の変化」「夢への挑戦」「就職」といった当たり前の要素が欠落しています。
だからこそ、物足りなさを感じる読者がAmazonのレビュワーにも多くいるのでしょう。
というか三角関係モノのマンガに必須ともいえる「主人公の葛藤」が、ほとんど見当たりません。主人公は最後の最後でビンタを食らう以外痛い目にあっておらず、冷静に考えてみると彼は非人間的なクソ野郎です。ひかるちゃんがかわいそうすぎます。
もしも当時にネットがあれば、同じく少年ジャンプの名作『いちご100%』の最終話どころではない「炎上」を引き起こしていたはずです。

奇抜さをもとめストーリーが破たん気味になっている作品こそこの当時多かれど、
きまぐれオレンジ★ロード 』のようにそもそもストーリーがない作品は他に例を思い浮かべることができません。
そもそも私が生まれる前の作品なので当時この作品がどう受け止められていたかなんて知りようもないのですが、どうして平易なストーリーが『少年ジャンプ』で生き残れたのか、不思議に感じざると得ません。

当時大きく流行ったラブコメディといったら『うるせいやつら』でしょうか。こちらも基本的に一話(もしくは数話)完結ものです。
そういえば、どちらの作品も作中ではディスコが度重なり登場していました。
当時の少年にとってディスコがそれほど身近であるものとは思えませんので、
きっとどちらの作品も少年のココロを掌握するトレンディドラマのような役割、つまり、流行の最先端を表現するような役割を担っていたんでしょう。

同じように考えれば、どうしてかわいい女の子が魅力を振りまくだけの本作がここまで絶大な人気をほこったのかなんとなく分かります。
私の推測ですが、つまりのところ、「女の子をマンガで描写すること自体が流行の最先端だった」のではないでしょうか。
昔は現代と違いインターネット等の便利なツールがありませんから、異性についての情報にアクセルする手段が非常に限られていました。異性について知りたいっていう需要が、マンガに向けられたんじゃないでしょうか。
(そういう流行がどうして1980年前後でマンガで発生したかはしっかりとした実証が必要になりますが、いくつか背景をいくつか想像することはできます。たとえば、手塚治虫赤塚不二夫の影響から脱しきれなかったとか、そもそも可愛い女の子を表現するマンガ的な技法が未熟だったとか、戦後急速に普及した男女共学の学校で学んだ人間がマンガを作る側になったとか、いろいろ考えつくことはできますが、詳しく調べるとなると大変な作業になりすね)。

とにかく、可愛い女の子の日常を可愛く描くことだけで大変ウケがよろしかった時代があったことは間違いないと思いますし、
この作品はそんな時代を象徴する名作だったのでしょう。
色々と描きましたが、いずれにせよ、ちょっと読んでみてキャラクターが魅力的だなと思ったら、間違えなく買いです。

最後に、やはり主人公はクソ野郎ですね。
この点において先生は日本漫画史に汚点を残したと言わざるを得ません。