1990年代生まれの漫画論。

大事なこと・好きなことを忘れないように。欲しいものを叫び続ける。

ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』を読んで その2 【マンガと気分、非日常の問題】

マンガと気分、非日常の問題

神話と非日常

 本書によると現代における神話とは、「人生の指針を示してくれる物語」です。筆者のジョーゼフ・キャンベルは現代の神話として、映画「スターウォーズ」を例に挙げています。正直私は、この作品を見てもそんな感想を抱くことができませんでしたが、まぁそこはいったん置いておきましょう。

 大事なのはキャンベルが、(映画館で見る)映画は神話化されやすい。という旨の発言をしていることです。簡単に説明すると、映画館という「特別な場所」に行くことで我々は我々自身を「日常から切り離す」ことができて、精神的な感度のようなものを高めることができる、ということです。どうやらキャンベル先生は「場所」にこだわっているようですが、その理由は非日常を味わえるから、という理由があるからなのですね。 

なぜ自身を日常から切り離して非日常を味わうことが大事なのか。

 私の拙いイメージで申し訳ないですが、確かに日本のお坊さんたちは、俗界から離れた山奥で修業を積んでいるイメージがあります。また私個人の経験の話にはなりますが、たとえば初詣に行く時お賽銭箱があるところに到着するまでの間、坂道や立派な門、砂利道、石畳の階段等、日常ではあまり見かけないものがたくさん視界にはいってきます。じゃりじゃりと砂利道を歩く音を耳に響かせながらそういう非日常的なものを眺めていると、特に何もしていないのに徳が高まったかのような気分になりますが、そういう「非日常的な気分」がここでは重要なのです。

 非日常な環境に自身を置く等の手段でそういう気分を保たないと、今触れている物語屋作品は読者の身にしみてはいってこない、ということなんですね、キャンベル先生が言いたいことは。

マンガと非日常

 さてここで、マンガについて考えてみましょうか。マンガのメリットの1つは、どこでも簡単に好きなタイミングで読み始めたり終えたりできるということですが、それだけでは他の紙媒体の小説等と変わりません。私の考えるマンガのメリットとは、絵があることで、そのマンガの世界観に浸りやすい、ということです。

マンガの世界観=非日常です。

 映画とは違って自分のペースで読み進められる(勝手にマンガのページをめくられたりすることはない!!)ことも、非日常の世界に没頭することの助けになっています。また小説と違い想像力を働かすことにパワーの大部分を使う必要がありません。自分の好きなペースで気楽に物語が楽しめることが、マンガならではの魅力です。

 そういった非日常の世界に没入しやすいマンガの要素が、キャンベル先生が言うところの「物語が私たちの中で神話化される」瞬間を産むのだと私は思うのです。つまり、マンガは、人生で大事なことを教えてくれるポテンシャルがとても高いのだ!!と私は考えるわけです。

ここでもう一つキャンベル先生の言葉を引用します。

 

                   神話の神話たるゆえんは、それが私たちを精神的なレベルの意識にまで持ち上げてくれることにあるのです。

              第一章 神話と現代の世界

 

「神話」を「マンガ」に置き換えても読めるような気がしてきませんか?(これは言い過ぎかな?笑)

 

続くかも、です。